明日は卒園式。卒園に寄せて

 小学校に上がる準備や、その期待感で紛れがちではあるけど、明日は卒園式。先週あたりから、最後のクラスごとの親の集まり、そこで輪になって先生からや親から一人づつの挨拶とか、親が先生を招待して主催する謝恩会やその打ち上げの飲み会、うちの幼稚園はクラス担任制ではなくて学年担当の数名の先生全員で学年全員の子供を把握しているので、お迎えに行くたびに、今日でこのクラスの担当は最後なんですっていう先生との挨拶など、いくつかの場面で少しづつお別れの言葉を交わしてしんみりしたりしたので、もう卒園式ではあまり泣かないかもしれないけど、これから毎日、雨の日も風の日も冬でも自転車で朝と帰り2回も子供を送り迎えできるのかなぁと不安になった入園のころから、3年間頑張ったよ、私。

 うちの幼稚園は、37年程前に開園して以来、当時は稀だった自由保育(時間割制ではなく、朝一から全学年が混ざり合って一日中遊び時間。行事の為の製作とか運動会の練習なども、自由遊びの中で時間を決めずに行わせる。手芸や工作、さまざまな外遊びなど、それぞれの場所に先生がいて、一緒に遊んだり教えたりする。読み聞かせとかの集団行動は昼食や帰りの時間のあたりに集中させる。英語・サッカー・水泳の時間もある)と、チーム担任制(学年に数名という風に担当の先生が決められていて、毎日学年ごとに自分が見た子供の様子を報告し合い共有し、学年の先生が学年の子供を全員把握している)という特色のある幼稚園だったそう。
 子供を遊ばせる環境に引かれてこの幼稚園に決めたものの、親が幼稚園にかかわる頻度が多めだと聞いていて、係とか面倒くさいのかなぁと不安だったけど、入ってみると、ある程度それを受け入れて入ってきている人が多いからなのか、係をやれそうな人がとりあえず係になり、そうで無かった人でも局所的に時間がありそうなら、行事の日や前日手伝いなどの単発の係として参加したり、幼稚園の参観日が参観ではなくて、お父さんでもお母さんでも、朝いちから一日先生になって普通に子供と遊びつくすという、ものすごい参加型だったり、子供の遊びブームが盛り上がって電車の路線とかゲームセンターとかお店屋さんごっこやおばけやしきやらが幼稚園にできたら、その都度連絡があり、作った遊びを見に来れたりとか、楽しかった。

 最近は「昔ながらの、親の片方が日中時間があって当たり前で、当たり前のように係もいろいろ分担してやって、幼稚園や父母会の一員として尽力するのはのは当たり前みたいな状態はおかしいし、システム的にそうしなくて良くなっている幼稚園のほうが絶対に良い」って考えるほうが圧倒的に一般的な考え方で、私達も普通にそう思って入園してきたわけだけど、幼稚園の方針が、このたった数年だけの期間、幼稚園でも全ての職員が一人ひとりの子供をしっかり見つめるから、親もやっぱり、できるなら子供や幼稚園とかかわろうっていう園長先生の考えが幼稚園を包んでいたからなのか、私達は3年間、それぞれの意識を、もちろん子供が既に2人3人いたり仕事をしていたり子供が生まれたり家庭の事情があったりしていたけど、それぞれの親ができる範囲の少しづつだったけど、子供が幼稚園で楽しんで遊ぶ3年間に親としても行動で関わるっていうことに向けることができた。そのあたりで多少ずつ親同士の気持ちも繋がる部分があって、タイプが違うなぁ、挨拶もしづらいなぁと初めは思っていたようなママとかとも、係の作業や手伝いで幼稚園に通って話すごとに、嫌々や義務感からだけではなくて打ち解けることができて、参加しているからには楽しんで参加するっていう意識があったから、いろんな事情で係の活動を休むことがあっても、お互いさまとか、出れる人が出て進むから大丈夫という考え方で、和やかに進めていけたりできた。

 私達親は、この幼稚園に入園する前「自分は子供を幼稚園で学ばせるために送り、迎えに行き、何を学んだかは先生から報告を受ける。係に参加することになってしまったら大部分は義務感で手伝い、他の親とは波風を立てずに深くかかわらないで過ごすことになるだろう」とイメージし、結果、イメージとはまったく逆の体験をした。「参加してみたら楽しかった、自分だけでなく沢山、皆で一緒に子供の3年間に関わった。人生においてすれ違うくらいしかしないくらいにタイプの異なる多くの親たちと、そのささやかな一点で気持ちを同じくできたこの3年間で、言葉を交わし、親しくなれた」という体験。
 これらの体験は、自分だけでは通えないので多少でも親の関わりが必要な幼児の期間であったこと、特色のあったここの幼稚園であったという限られた囲われた優しい世界のなかでしか、ありえなかったおとぎ話のようなことだったかもしれない。きっとそうなんだろう。だけど、孤独に育児をして、やっとそこそこ大きくして、初めて社会的な場所に子供を送り出して少しだけ一息ついたこの3年間に、子供の生活に社会として関わるという場面で、一度でもプラスのイメージを持てる体験をできたこと、本当に本当に楽しかった。
 親の心理面のことばかり書いて、幼稚園の主役は子供だよ! って、読んでいる人、思うだろうけど、子供はもう本当に、心配ないほどに思いっきり、3年間素晴らしい幼稚園生活を楽しみ尽くしました。そうだって疑わずに思える素晴らしい幼稚園でした。遊んでばっかりだったから、態度とか、学力面とか、小学校で苦労するっていうイメージがあるけど、実際のところ、幼稚園時代に押さえつけられていないし、思いっきり遊ぶ場面と集団行動する場面の区別がつくから小学校デビューで変にグレてきて学級崩壊させたりするような子が少ない、自分たちで何をするか決めて集団の中で提案して皆でやろうっていうことを学んできているから、児童会などでリーダー性を発揮する子が多い、学年関係なく過ごしてきたから面倒見が良かったり、下の子や上の子と仲良くできるとか、好きな遊びにとことん集中する体験ができているから勉強に集中する力もあるので学力も意外と悪くないとか、なんなら先日園長先生に卒園児の子からハガキが来て、今年東大に入ってみたら同じ幼稚園卒園以来疎遠だったけど偶然にも大学で再会したって子が何人もいたと書いてあったとか、外遊びが好きな子は3年間一日中走り回ってることもできるわけだからスポーツが得意な子も多いとか、小学校に進学した先でもそう悪いことはないようです。
 どんな環境の保育園でも幼稚園でも子供は楽しむし、それぞれの良い所があっただろうと思うけど、私達が通っていたところは、子供にも、おまけとして私たち親にとっても、本当に最高の3年間をくれた幼稚園でした。ありがとう!