パン食い競争の練習と前歯の非存在

 去年卒園した幼稚園の運動会では、毎年プログラムの中に、その日来ている小学生が参加できるパン食い競争がある。
 たぶん、下の子の応援に来た上の子たちへのサービスとか、普段会えない卒園児が幼稚園に来て顔を合わせる良い機会なのかな? パン食い競争をして、ゲットした菓子パンをもらえるっていうレース。

 3年間、パン食い競争いいなぁ〜って見てきていて、さなも1年前から行く気まんまんだから、時間に合わせて一緒に行く予定なんだけど、その話を同じ卒園児のお母さんとしてたら、その子のおうちではパン食い競争の練習もしたって聞いて、(はっ! 今さな、前歯2本抜けちゃってるから、うまくパンかじれないかもしれない)ということに気づいて、うちもちょっと練習してみることに。


 小袋のお菓子に針金のラッピングタイをセロテープで固定して、その針金部分を曲げて先に小さいわっかを作った紐にぶらさげて。ラッピングタイの針金はそんなに強くないから、小袋をくわえて強く引くとお菓子が外れるっていう仕組み。これで何回でも練習できる!

 そして、これでいくら練習しても平気だよ! さあどんどんおやり! とさなに試してもらったら、向こうから勢いつけて走ってきて、すんごい普通にスムーズに、パクっとお菓子をゲットして「んーーーー(とれたよ)」て、私の元にやってきた。
 あれ? そこまですんなりとれちゃう? うん!練習の必要なかったね! って感じだった。前歯ないから心配してあげたのに……すっごい杞憂だった。


 さな、夏に私の実家でばあちゃんちのトウモロコシを食べた時も、あっ前歯無いのに食べれるのかな?ってふと見たら、前歯がないから食べにくいとかも言わず前歯がないから食べれない…みたいなそぶりなどのあらゆる前ふりも一切なく普っ通ーに、顔を傾けながら前歯の横の歯を使って猛スピードでガリガリ食べつくしてて、好きなものへの食欲に関しては野生だった。

 純粋な意欲というものを持つときには、自分の前歯があるかないかも意識にのぼらず、ただそのとき持っているステータスでぶつかっていくだけなんだなぁ〜って感心した。